競技にすべてを懸けてきた人ほど、引退した瞬間に「この先どうやって生きていけばいいのか」と立ち止まってしまうものです。社会人としての経験がない、パソコンも得意ではない、自分に何が向いているのかも分からない。そうした不安を抱えるのは、決して珍しいことではありません。この記事では、アスリートのセカンドキャリアについて、よくある悩み、競技で身につけた強みの生かし方、埋めておきたい課題、面接での伝え方、職場選びのポイントを順に解説します。
引退後にぶつかる3つの不安
まずは、競技を離れた人がよく口にする不安を整理しておきます。
社会人経験がない
学生時代から競技中心の生活を送ってきた人は、一般的な会社勤めを経験していないことが多くあります。周りの同世代がすでに仕事の経験を積んでいるように見えて、焦りを感じる人もいるでしょう。
パソコンが苦手
メールや資料作成、表計算ソフトなど、会社では当たり前に使われる道具に慣れていないという悩みです。求人票に「PC操作ができる方」と書かれているだけで、応募をためらってしまうこともあります。
何が向いているのか分からない
競技以外で自分が何をしたいのか、考える機会がなかったという人も多いはずです。やりたいことが見つからないまま、なんとなく仕事を選んでしまうと、あとで後悔につながりやすくなります。
こうした不安は、どれも準備と環境しだいで乗り越えられるものです。そして何より、競技の世界で積み上げてきたものは、仕事の場でもしっかり通用します。
競技で培った強みは営業でこう生きる
アスリートが持つ強みの多くは、営業という仕事と相性がいいものです。代表的なものを整理します。
| 競技で培った強み | 営業での生かし方 |
|---|---|
| 目標から逆算する力 | 月の目標から、必要な商談数や連絡数を割り出して動ける |
| 反復練習を続ける力 | 話し方や提案の型を、繰り返し練習して身につけられる |
| 負けず嫌い | 断られても次に向かい、数字にこだわり続けられる |
| チームワーク | 社内の仲間と情報を共有し、チームの目標達成に貢献できる |
| 礼儀・あいさつ | お客様からの第一印象がよく、信頼を得やすい |
| 体力 | 移動や訪問が多い日も、集中力を保って動ける |
目標から逆算して練習してきた経験
大会や試合に向けて、いつまでに何をできるようにするかを決め、日々の練習を組み立ててきた経験は、そのまま営業の目標管理に生かせます。大きな目標を日々の行動量に分解する力は、営業で成果を出すうえで欠かせません。
負けん気とあきらめの悪さ
営業では、断られることが日常です。そのたびに気持ちが折れていては続きません。試合に負けても練習に戻ってきた経験がある人は、断られてもまた次に向かう粘り強さを持っています。
厳しい指導を受け止めてきた経験
監督やコーチからの厳しい指摘を受け止め、修正してきた経験も強みです。仕事を覚える最初の時期は、指摘を素直に受け止めて改善できる人ほど伸びていきます。
礼儀と体力という土台
あいさつや身だしなみ、時間を守るといった基本は、営業の信頼の土台になります。また、一日に何件も訪問したり、遅くまで商談の準備をしたりする日もあるため、体力に自信があることは素直に強みと言えます。
営業に向いている人の特徴については、営業に向いてる人の特徴でも詳しく紹介しています。
埋めておきたい3つの課題
強みがある一方で、社会人として早めに身につけておきたいこともあります。
ビジネスマナー
体育会で身につけた礼儀は大きな武器ですが、会社ではそれに加えて、敬語の使い方、名刺の受け渡し、電話やメールの対応といったビジネスマナーが求められます。本や動画でも基本は学べるので、入社前から少しずつ触れておくと安心です。
数字の管理
営業では、売上や契約数、訪問件数などを自分で管理する場面が多くあります。競技で記録やタイムを管理してきた人なら、考え方は難しくありません。数字を毎日つけて、振り返る習慣を早めに身につけましょう。
パソコンの基本操作
メールの送受信、文書作成、表計算の入力といった基本操作は、仕事をしながらでも覚えられます。ただ、最初から全くの手探りだと負担が大きいので、タイピングや基本的な操作だけでも事前に練習しておくと、入社後の立ち上がりが楽になります。
足りないものは、あとから身につけられる。大事なのは、足りない部分を認めて、練習するときと同じように一つずつ埋めていく姿勢。
面接で競技経験をどう伝えるか
面接では、競技の実績そのものよりも、競技を通じて何を身につけ、それを仕事でどう生かすかが見られています。
実績を並べるだけで終わらせない
大会の成績だけを話しても、面接官には仕事との結びつきが見えません。次のような流れで話すと伝わりやすくなります。
- どんな競技に、どのくらいの期間取り組んできたか
- その中で直面した壁と、乗り越えるためにやったこと
- そこで身についた力を、この仕事でどう生かしたいか
たとえば「レギュラーを外された時期に、自分の課題を書き出して毎日の練習メニューを組み直しました。目標から逆算して行動を決める力は、営業の目標達成にも生かせると考えています」のように、具体的な行動と仕事への結びつきをセットで話します。
引退の理由は短く前向きに
けがや成績などで引退した場合も、理由は短く伝え、これからの話に重心を移しましょう。話し方の型は、空白期間・過去を面接でどう話すかで詳しく解説しています。
社会人経験のなさは隠さない
社会人経験がないことを取り繕う必要はありません。「経験がない分、指摘は素直に受け止めて、早く一人前になりたい」と伝えるほうが、面接官には好印象です。
育ててくれる職場を選ぶ
セカンドキャリアで失敗しないために、最も大切なのは職場選びです。未経験の人が伸びるかどうかは、入社後にどれだけ教えてもらえるかに大きく左右されます。
研修や指導の体制を確認する
応募前や面接の場で、入社後にどんな研修があるのか、誰がどのように指導してくれるのかを確認しましょう。「現場で見て覚えて」だけの職場だと、社会人経験のない人は苦労しがちです。
厳しくても見捨てない環境か
アスリートにとって、厳しい指導そのものは苦ではないはずです。大事なのは、その厳しさが成長のためのものか、そして結果が出ない時期にも向き合ってくれるかどうかです。
自分の強みを整理してから選ぶ
何が向いているか分からないときは、これまでの経験を振り返り、自分の強みと弱みを書き出すことから始めましょう。自分を理解したうえで仕事を選べば、入社後のずれも少なくなります。一人で整理するのが難しければ、自己分析や過去の振り返りを手伝ってくれる場を活用するのも一つの方法です。
未経験で営業に挑戦する際の不安については未経験の営業はきつい?を、仕事選びの考え方は学歴なしでも稼げる仕事の選び方を参考にしてください。
まとめ
- 社会人経験やPCスキルの不足は、準備と環境しだいで乗り越えられる
- 目標から逆算する力、負けず嫌い、礼儀、体力などは営業で大きな武器になる
- ビジネスマナー、数字の管理、パソコンの基本は早めに身につけておく
- 面接では実績よりも「何を身につけ、どう生かすか」を話す
- 研修や指導の体制があり、見捨てずに育ててくれる職場を選ぶ
競技で積み上げてきた日々は、引退しても消えません。次のフィールドでも、その負けん気を思い切りぶつけてください。